何種類かの草花をひとつの鉢に植える寄せ植え、寄せ植えを吊るして楽しむハンギングは、地面の少ない玄関まわりや、殺風景になりがちな階段やフェンスに添えると、雰囲気がガラリと変わります。基本になる寄せ植えの手順とコツ、水苔バスケットを使ったハンギングのつくり方を紹介します。【解説】戸倉多未子(ガーデナー)
著者のプロフィール
戸倉多未子(とくら・たみこ)
有限会社グレイスオブガーデン代表。ガーデナー。暮らしを豊かにする緑の庭づくりをモットーに、小さな庭からエクステリア、ガーデンリフォームまでオリジナルガーデンを手がける。化学肥料に頼らない、自然の恵みを生かした庭づくりを得意としている。ガーデニング講師歴30年、ガーデニング関連の雑誌などでも活躍中。
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本稿は『小さな庭のつくり方』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。
寄せ植えのつくり方
基本になる三方見デザインの寄せ植えの手順とコツを紹介します。三方見とは、正面を中心に、左右180度に草花がきれいに整って見える状態にする形です。
用意するもの
- 好みの鉢
- 好みの苗
(ここでは、パンジー、斑入りセリ、ビオラ、ミニバラ、
ネメシア、エレモフィラ、スイセンの球根を使いました) - 鉢底ネット
- 土(赤玉土+腐葉土または培養土)
- 元肥
- 珪酸塩白土

(1)鉢の底に穴があいている場合は、鉢底ネットを敷き、土を鉢の半分くらいの高さまで入れる。土の水はけが心配なときは、土を入れる前に軽石を敷く(軽石はキッチン用の三角ネットに入れると便利)。

(2)ポットのまま鉢に植物を置いて、バランスを見ながら植える位置をシミュレーションする。三方見の場合、高いものを後ろにし、手前に向かって低くなるように配置するとよい。

(3) で決めた位置を崩さないようにしながら、鉢からポットをはずし、元肥を入れ(根につかないように底のほうにもぐり込ませる)、さらに根腐れ防止用の珪酸塩白土をまく。

(4)後ろに入れるいちばん背の高いエレモフィラをそっとポットからはずし、ポットの上面が鉢の縁から1cm下にくるように入れる。縁と同じ高さに植えると水やりの際に水があふれてしまうので、ウォータースペースを確保する。

POINT
ポットからはずした植物は、しっかり根づくよう植える前に根を手でやさしくほぐし、根元の傷んだ葉などはとり除いて風通しをよくしておきます。

(5)花の向きを考えながら、高さがあるものから の要領で鉢に入れ、間に土を入れる。セリは枝が鉢からたれ下がるように少し斜めに角度をつけて植える。鉢の中央にパンジーとその横に球根を入れる。

(6)ミニバラの株を手で分けて、散らすようにして3か所に分けて入れる。ひと通り植えたら、根と根の間にすき間なく土が入るよう割りばし等でつついて、足りなければさらに土を入れる。

(7)全体のバランスを見ながら、飛び出た枝などははさみでカットする。確認の際は1mほど下がって全体を眺めるようにするとよい。ジョウロで土全体に水をやり、土がへこんだところにはさらに土を足す。

POINT
寄せ植え&ハンギングのお手入れのコツ
ぎゅっと植物がまとまっているものなので、こまめなお手入れを心掛け長持ちさせましょう。乾燥しやすいので水やりは1日1回。花が多めな鉢なら、咲き終わった花の花がら摘みはこまめに。また、天気が荒れたり、日が強すぎるときは鉢を移動させましょう。

水やりは時間をかけてゆっくりと。植えたてのときは特に注意して。
完成!初心者でもすぐにできる

直接鉢を置くよりも、イスや花台などにのせて高さをつけるのがおすすめ。

(1)エレモフィラ ニベア
(2)パンジー
(3)ネメシア
(4)ビオラ
(5)ミニバラ
(6)斑入りセリ フラミンゴ
(7)スイセンの球根
横から見ると
後ろから前に向かって低くなっているので、植えた草花が隠れることなくバランスよく見えます。後ろが見えない壁前に置くとよいでしょう。

ハンギングのつくり方
ナチュラルなテイストが人気の、水苔バスケットを使ったハンギングのつくり方を紹介します。一般的なバスケットを使う場合も(3)以降同じ要領となります。
用意するもの
- 好みのハンギングバスケット
- 好みの苗(ここでは、カルーナ、ネメシア、アンティークビオラ、
ハツユキカズラ、アイビー、プリンセスクローバー、ミニチュアローズ、
ロータス ヒルスタス、フリル咲きパンジーを使いました) - 水苔
- ハンギング用の土(下記参照)
- 元肥
- 珪酸塩白土 ・バスケットを置く台

ハンギングの土について
吊り下げるので、軽くなる素材を混ぜて。市販のハンギング用培養土でもOKです。

水苔を使うなら
バケツにたっぷりの水をはり、水苔を入れて戻します。1時間程度は浸しておきましょう。

(1)バスケットは台(ごみ箱など筒状のものが置きやすい。ここでは100円ショップで購入した鉢)にのせる。戻した水苔を軽く絞り、バスケットの内側に入れる。

(2)水苔は、底にはたっぷりとのせ、側面は手のひらでバスケットを挟むようにしてはりつける。

(3)1度ポットを並べて植物のだいたいの位置を決めたら、土を半分まで入れ、元肥と(根につかないように底のほうにもぐり込ませる)、少し多めに珪酸塩白土を入れる。

(4)縁の植物から植える。ポットからはずし、土を少しずつ入れつつ、鉢を回しながら1周ぐるりと植える。

POINT
縁に入れる植物は、植える前に株を広げて平らにすると縁にフィットしやすい。枝葉が縁からこぼれるように、斜めに入れるのがポイント。

(5)縁に苗を植え終わったところ。苗と苗の間に土を入れる。

(6)真ん中にカルーナを入れる。真ん中は周囲よりも高くなるよう立てて植え、全体が山なりのシルエットになるようにする。中央と縁の間のすき間に、3つに分けたバラを3か所入れる。

(7)土が見えなくなるように、土の面に水苔を敷き詰める。

完成!ウエルカムフラワーに

S字フックを使ったり、柱に釘でフックを打ちつけてさげたり。案外重量があるので、つるすときは気をつけて。

(1)カルーナ
(2)ネメシア
(3)アンティークビオラ
(4)ハツユキカズラ
(5)アイビー
(6)プリンセスクローバー
(7)ミニチュアローズ
(8)ロータス ヒルスタス ブリムストーン
(9)フリル咲きパンジー
反対側から見ると
ハンギングは、鉢から草花がこぼれ落ちるように植えるのがポイント。つる性の植物などを組み合わせ、思いきって動きを出すと、イキイキとしたハンギングに仕上がります。

小さな庭の植物カタログ寄せ植え&ハンギングにおすすめの植物

イラスト/あらいのりこ
こんもりとボリュームの出る草花
草丈は15cmくらいで、丸いフォルムをつくり寄せ植えの中央や、手前側を飾るのに役立ちます。こんもりと茂るので、間を埋めるのにも適しています。下に季節ごとにおすすめの草花を紹介しています。花が楽しめる時期でわけていますが、夏のペチュニアやアンゲロニアは、晩秋まで長く咲き続けてくれることもあります。
春
■パンジー
■ビオラ
■スイートアリッサム

ビオラ
夏
■ガイラルディア
■ブラキカム
■ペチュニア
■アンゲロニア

アンゲロニア
秋
■アゲラタム
■ペンタス
■センニチコウ

ペンタス
冬
■イベリス
■クリスマスローズ
■ネメシア

クリスマスローズ
POINT
鉢のセレクトを考えてみる
寄せ植えやハンギングは、デザイン性を重視して植える形や素材にもこだわりたいものです。外国の空き缶やブリキの洗面器の底に穴をあけて鉢代わりにする、身近なものを活用する。はたまたリース型ワイヤーバスケットでリース風に植えてみるなど、自由に楽しみましょう。

(左)リース型(右)アンティーク缶
高さの出る草花
上に伸びて高さの出る草花は縦のラインを強調するのにぴったりです。鉢の奥か中央に配置すると全体のフォルムがまとまりやすくなります。草丈の高い植物は風に揺れる姿も魅力的です。
春
■デルフィニウム
■ギリア
■ラベンダー
■ニゲラ

ニゲラ
夏
■ベロニカ
■宿根フロックス
■ルドベキア
■インカビレア

ベロニカ

宿根フロックス
秋
■シュウメイギク
■ダリア
■メキシカンセージ

メキシカンセージ
冬
■ストック
■エリカ
■キンギョソウ

キンギョソウ
アクセントになるリーフプランツ
最近では色、形とも個性的なリーフプランツが増えています。斑入りの模様や明るい黄緑や赤などの色が、アクセントになります。また、アジュガやヒューケラは春先に花も楽しめます。
春
■ヒューケラ
■アジュガ
■ホスタ

アジュガ
夏
■宿根ロベリア
■ベコニア
■カンナ
秋
■ベニセタム
■アルテルナンテラ
■ユーフォルビア

アルテルナンテラ
冬
■コクリュウ
■ハボタン
■プラチナ
■チェッカーベリー

コクリュウ
垂れ下がる植物
下の3つは、花も楽しみながら枝垂れる種類です。カラーリーフでも鉢からこぼれ出るようなフォルムのものがたくさんあります。鉢からあふれるような草花があると、生き生きと動きのある寄せ植えに仕上がります。
■コンボルブルス
■シレネユニフローラ
■ヒメツルニチニチソウ

コンボルブルス

ヒメツルニチニチソウ
なお、本稿は『小さな庭のつくり方』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。下記の本は、知りたい情報の全文がコンパクトにまとまった一冊です。詳しくは以下のリンクをご参照ください。

※(9)「お手軽花壇のつくり方」はこちら